Wednesday, June 20, 2018

読書感想「プラチナデータ」




さまざまな作品が映画化されている東野圭吾の小説。

個人的に科学ミステリーは好きだ。

その中でも特別個人的好みを言わせてもらえば、この「プラチナデータ」、
ストーリーの緻密さや心理的深さの表現、色気がちょっと足らなかったかなあ、と感じところ。



実際の犯罪現場から検出されたDNAから、 膨大なデータベースとの一致を検索し、 犯人を特定するプログラム。

 革命的システムの裏に隠された陰謀とは? 

鍵を握るのは謎のプログラムと、もう一人“彼” である犯人。




でも背後で最もストーリーの印象を濃くしているのは、まぎれもない多重人格という厄介なキャラクターだ。
自分は本来どんな人物なのか、
本当に存在しているのか、
存在意味や心がもとない、人間という生き物の心の謎について語りたかったのではないか。


Monday, June 18, 2018

人生フィクション。



義理母が10日ほど前に、脳梗塞で倒れて入院した。

日々病院に出入りしていると、クアラルンプール国立総合病院の緊急口にはいつも救急車が止まっていて、見舞客も外来患者さんの足も途絶える事なく、いかに多くの人にとって病院が大切な存在かわかる。

そして患者さんが横たわるのを見て、人間健康が一番大事ということをつくづく再認知させられ、自分が比較的健康でいることへの感謝心もわいてくる。

自分がいつなんどきか大病になったり、認知症になったりするのは天のみぞ知る、という事で、そうなってしまったらどうしようもないことだ。
などと色々思いを巡らせる。




「身体がピンピンしてたってお金が全然なきゃね〜」といういう声もこれまで随分聞いてきたけど、「病気で寝ていたらお金が腐るほどあってもどうしようもない」





若いときは「一生働くなんてイヤだ」と思うことがある。

私が働き全盛だった頃は「いかに早くリタイアするか」というワーキングモチベーションのようなセミナーが流行ったものだ。

でも、だんだん年を重ねていくと、「一生元気で働けることの素晴らしさ」がわかってくる。

今時代は変化し、かえってリタイアというのはダサく、またリタイアという言葉も消えていくかもしれない。

人として
健康が前提で、それがあれば人の役に立つこともあり、それが時には喜ばれ、自分にとっても生きがいになったりもする。

誰の迷惑にもならずに、お金を稼いで生活ができる(一般論として)。

そして休みになれば好きな事をしたり、なんらかの小さな喜びみ見出せる、自分の稼いだものでちょっと旅行にでかけたりもあるだろう。


同時に、年をとると仕事がなくて、毎日何もすることのない空しさや、怖さというものが年とともにわかってくるというものだ。

その辺が、若い時分に一時期みんながそろって「早くリタイアしてのんびりするんだー!」と目標を掲げていたのと全然考えが異なってくるわけだ。

人生、恋にいのちを賭けてしまったり、ひょんな事から想像もつかない流れになったり、人の長い人生って、いいもわるいも、とても豊かなフィクションだ。

Tuesday, June 12, 2018

毎日コツコツと。



本当のあたし、
仕事のこと、
好きなこと、
選択すること、
息子達のこと、
心揺さぶられるいくつものこと。

やりたい事とは何か?

やりたい事を本当にやっているのか?

やるべきこ、と、できること。



やりたいことがなんだかわからないと、不幸のような風潮があるけど、進路が行き詰まっても、やりたい事が見つからなくても、それはそれでいいと私は思う。


今出来る事を毎日コツコツとやって、そしてテクニックや自信やらが芽生えて行って、前よりも視野が広がっていく、そんなように誰もが生きている上では成長しているのだから、その過程でたまたま好きな事がみつかった、というのでもいいし、そのままコツコツとさらに強く、深く、自分の立ち位置を見つめる旅だっていいじゃないか。





読書感想「あなたには帰る家がある 」




あなたには帰る家がある    山本文緒


それぞれの登場人物が普通ながらも個性ありきで、結構リアルな構成。

発表時がまだ携帯電話がおもいっきり普及していなかったのでポケベルが出てくる。
ストーリー自体25年前の作品とは思えない。
2018年が舞台でも何も違和感がない。

それは、裏を返せば、夫婦や家庭の問題は、当時から、いや昔から何も変わっていない、未来も何も変わらないということか。

結婚とは何だろう。

幸せとは何だろう。


夫婦って忍耐と思いやりだなとつくづく感じたけど、でも綾子みたいな女にだけにはなりたくない。

Thursday, June 07, 2018

読書感想「月の満ち欠け」




月の満ち欠け

2017年上期の直木賞、佐藤正午の「月の満ち欠け」。

「虚構と現実をさ迷う純愛物語」という表現をされている。
明らかにフィクションだろうが、佐藤正午氏のよく考えられたストーリーライン、熟練した文章力と不思議な説得力は読書後も唸らずにはいられない。
なんでこの人はこんなに上手なんだろう。
あんなに、のんびりとしたルックスで、こんなにも情熱的な小説を書くとは。。。


言い方によっては怨念、ミステリー的なので一見恋愛がメインには見えないのだけれども、実は愛がテーマとなっている小説なんだという印象を受ける。
恋愛にありがなりがちなチープストーリーではない、何よりも「生まれ変わっても人を愛する」という想いの強さがテーマなのではないかな、と思う。


Friday, June 01, 2018

読書感想「ブルーもしくはブルー」



「ブルーもしくはブルー」



ドッペルゲンガーのお話。



自分と同じ人物がどこかにいて、偶然その自分に出会い、2人で何かを(夫のいる家にそれぞれ入れ替わる)実行するというストーリーで、女性ならでのドロドロとした悪意の中にも女性の細やかな心理が全体に流れている。


ひたすら愛というものに疑問を投げかけ、
そのテーマに投げかける疑問は半端じゃなく、懐疑的で、深く頷くこと然り。



このドッペルゲンガー、自分の身に起こったらどうだろう?



私たちは見たいものしか見ていない。

比喩的にだけでなく、文字通りにも、生理学的にもだ。各自の認知能力は、目的を果たすために調節されている。



誰もが倫理と意味を求める本能を持ってこの世に生まれてくるのだけれど、
人間は何か少しでも理解できるのかどうかさえ、私は疑問だ。

世界は、私たちが考えているようには存在していないのではないかとも思う。