Tuesday, April 25, 2017

The book review "paper moon".

 

 




最近のメディアは不倫をテーマにした芸能人のスキャンダル報道が世間を賑わせている。(そういうバカバカしいのは一切興味ないので読まないけど)

不倫というのは物語のジャンルとしては古くからあるおきまりのテーマでもあるのだが、横領や借金地獄も加わってそこにのめり込んで行く心理が上手く書かれている「紙の月」は素直に面白かった。


女性の心理、ちょっとしたことで高揚したり、いきなりふさぎ込んだり、泣き出したりといった気持ちの移り変わりも巧みに書かれている。




この本を読んで思ったこと二つ。

「ふとしたことがきっかけで気がついたら、ということは案外普通に誰でも有り得るのかもしれない」

、「生涯に一度でもお金に振り回されない人生と言えた、いうのはの難しい」だ。




主人公の女性は「私の本当の居場所はどこなんだろう」「どの自分も、“本当の私”ではない」とぼんやりと考える。他にサブで出て来た取り巻く女性達も、お金の病的な浪費が原因で人生の歯車がかみ合わなくなっていったり、心に漠然としないものを抱えながら生きている。


カード破産や横領事件を起こすのは人間だが、心の渇きを買い物でしか満たせない人間の金銭感覚を麻痺させるような仕組みを作り上げてしまい、それを、当たり前のように運営しているのも人間だ。

しっかりとした自分の意思がある人は本当に大丈夫なのだろうか?暴走は行き過ぎた感じがしないでもないが、焦りと浮遊感を持って誰しもこんな取り返しの付かない歯車に乗ってしまう可能性はあるのではないか。


 

Tuesday, April 04, 2017

The book review "gasoline life".





伊坂幸太郎の「ガソリン生活」。

意識を持った車の視点が超面白い。
イメージとしてはディズニーのカーズとかトーマスエンジンのキャラ同士が話している感じ。


車にあまり思い込みがない私でも、主人公家族の所有車「緑のデミオ」の愛くるしさにノックダウンさせられるだろう。



それぞれの個性的なキャラクターを作るのが上手な伊坂さん。
とんかくキャラが魅力的だ!


ある出来事、事件を中心背景に、駐車場で止まっている時、または走行中渋滞の時、様々な場面で車達のおしゃべりが始まるんだけれども、人間の感情と車の感情の違いとか見方や感じ方、推理力の違いとか人間と並行して書かれている。

心あっても自分では動けない車達の焦ったさ。

現実話ではなくても、もしかして本当にこんな事が車同士であるのかもなんて思ってしまうほど。
所有者次第で車の幸福度も変わる、というもの不思議自然に納得、車もっと大切にしてあげなきゃ、とか(笑)


エピローグもとても嬉しくなるような良い構成だった。

伊坂さんの作品は、他小説に出てくる人物がチラッと出てきたりするんだそうだが、読みが浅いのだろうか、私はいつも気がつかない。悔しいな。