Thursday, July 13, 2017

The Book review "Dolphin daily".




最近読んだ数冊はイマイチ惹きつけられる本がなかった中でもやっと読み終えた「イルカ日誌」は読み応えがあった。
全ページ328ページあるが、訂装飾は横書きで1ページが文庫の3ページ分くらいはありそうな文量だ。



イルカへの探究心をもちつづけた少女が、やがて海洋生物学者となってバハマの海へと旅立ち、そこでイルカたちのコミュニティを間近に観察した25年間の記録を綴ったもので、彼女の揺るぎない持続的精神力、断固たるポリシー、深い洞察力、啓蒙的な研究にはただただ敬服するのみで、こうした生き方に「羨ましい」などと言っては軽率すぎるように感じる位だ。




一方で、まだまだ今の科学では人間を含めた動物の生態は知らない事が多いんだな、という事を改めて思い知らされた。
それは、たとえ子供が思いつきそうな当たり前な疑問に対してもだ。







この本で一番強い魅力は何と言っても「自然界全体に対する敬意」。
人間はいかに自分の種を中心に世界をつくってきたか。
彼女のモットーは「彼らの世界で、彼らの望むやり方で」。
この言葉がプロジェクトの方法のすべてを語っている。



都市部で生活している場合、私達が野生動物と出会う機会はあまりない。都会の真ん中では虫さえも見当たらない。海、それも海中で、となれば、さらにその経験は稀なものになる。

野生動物を知らなくとも、日常生活に困ることはない。しかし動物に対する理解がないと、自分たちが属する人間社会への理解度も低くなるような気がする。



動物には、人間が想像するしかない感覚の世界に生きている。聴覚、視覚、味覚といった違いに加えて、わたしたちの理解が及ばない世界に住んでいる。人間が通常思う自らの文化への思いと同様、彼らの彼らの文化の存続への願いがそこにはある。(と信じる)

わたしたちのものに相当するような、でも同じではないと思われる心があると私は信じる。




もう一つのポイントは、人間が飼育する野生のアトラクションやヒーリングセラピーなどと謳っているエンターテイメントについて。

日本の和歌山県で毎年行われているような大量に家族や仲間を虐殺された経験の後に、生息地から連れ出され、見知らぬ閉じ込めた飼育環境に置かれ、人間の娯楽のために訓練を受けている、という事情をひとたび知れば、おそらく誰にとってもイルカショーは、気持ちのいいものではなくなるだろう。
彼女のように、25年にわたって野生のイルカがどんな能力をもち、どんな社会をつくり、どんな暮らしをしているのか、間近に観察してきた学者にとっては、それはきっと耐え難いものだろう。

しかし私達一般人のように海にいるイルカのことをそれほど知らなかったとしても、彼女の話を聞き、少し想像力を働かせれば、人間社会がどんなことを野生動物に強いているかに思い至ることは、それほど難しいことではない。

こうした野生動物に関する教育が増えれば、より多くの人が野生動物を利用したエンターテイメントに興味を失い、アトラクションが消えていくのではないか、と期待したい。

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