「夜市」と「月夜の島渡り」
全ての短編小説は、沖縄を舞台にした神秘的な怪奇物語で、両方とも恒川さん特有の世界観が楽しめる。
ねっとりと土着感が濃厚な南国の島描写が上手なので、日本の妖怪や精霊が多く宿る言い伝えのあるこれらの島が好きなんだろうなと思っていたら、やはり沖縄在住なのだそうだ。
シンプルな文章と、独特の死生観と琉球の歴史と文化が入り混じった、不思議な物語。
ホラーを読んでいる気がしないけどみ、ちょっぴりゾッとする非日常な世界。
人間としての未来に対する希望や救い。
あえて翻訳しない方言。
あがらうことができない理不尽な運命や人間の罪深さ、どこかしら弱い人間に対する愛情や慈悲を織り交ぜ、魅力的に仕上がっている。