Monday, June 23, 2008

孤独な事件・自殺の今,昔 コラム(4)



数ヵ月ぶりに日本へ里帰りをし年未年始を過したわけだが、久々の日本は子供というとゲーム、大人というとメール関連のドラマ、宣伝も携帯やパソコン、テクノロジー分野が目立っている様に感じられた。
 
そして滞在中に“宅配毒物自殺事件”という、携帯、コンビニ、パソコンとまさに現代の3大象徴物が関係している、新時代を感じさせる事件が起こった。

 この事件の内容は、ある女性(24才)が宅酸便で届いたカプセル六錠を飲み死亡した、というものから始まる。警視庁では宅配便の差出人記載欄に携帯電話の番号が書かれており、この電話に出た男性は薬物送付を認めた。小包には架空の人物名で送られおり、自殺ほう助容疑で捜査を開始。この自殺をした女性は以前から精神不安定で自殺をくり返してきたという。

 薬物は全部で8人に配送、この配送した男性と死亡した女性はインターネットのホームページ“ドクターキリコの診察室”がきっかけで知り合った。
このホームページは、睡眠薬の致死量、安楽死を教えるなど自殺の相談にのっていたもので、もともと自殺願望の強かったもう一人のある死亡した女性(21才)が開設したものだったが、後に薬物にくわしい札幌に住む匿名男性、草壁竜次という薬物の免許をもっている男性に、診察専属のドクターとして引き受けてもらった。
女のホームページは、病気の辛さから何度も自殺未遂をくり返し、最後の自殺までの心情を綴った生々しい日記が書かれてあった。

 女性が死亡する一分前に、札幌の男性も青酸カリを服毒して死亡している。死亡する前にこの男性は「自分は薬物に関し知識があり、青酸カリが扱える。」と捜査員に語っており、偶然とはいえ、一分差の死亡時刻は心中だったのでは、とも推測されている。
しかし、青酸カリを購入したうちのひとりの主婦はこの様に話している。
「青酸カリは自殺するつもりで買ったけれども思い直し、飲みませんでした。そして友人と一緒に自殺を試みようとして、新たに買ったけれど、これは生きるためのお守りです。これをもっていればいつでも死ねるから、もう少しがんばってみようと思う。札幌の男性は青酸カリを積極的に売っていたのではありません。失恋や受験に失敗したという理由では売らなかったし、病状や心理を詳しくカウンセリングして薬ではどうにもならない人だけに売っていました。彼自身も、あれは不思議なお守りで、飲んでもらうためではなく生きるために渡す。青酸カリの品質は5年で、5年後に自身の所へ届ってくるのを待ってるよ。と言った時があります。でもひとりの女性が本当に飲んでしまったのがショックで罰悪感のために自ら命をたったのではないでしょうか。」と男性をかばい、警視庁による薬物任意提出を拒否しつづけている。

 インターネットの場合は、直接のやりとりをする生身のコミュニケーションではない。
電話と違い、声で人の特徴や感情の起伏を伝えることもない。匿名性、人間関係の希薄さ、言葉への責任の軽さ。
情報発信者の特徴がベールに近まれることにより、新しいメディアを利用した犯罪も多くなってきており、時として日常生活で押し隠されている欲望や攻撃性がむき出しになることもある。
そして、それは犯時にマスクやサングラスをするのと似ている様な気もする。
 この例では、仮想世界、ネットで死への意図を抱えた若者の共同体が育っていた。おそらくこの男性自身も自殺願望があったのではないだろうか。
 青酸カリを配送した男性が死亡してからも、“ほう助罪は大きなお世話死にたい人には死なせて。”など、悔みの書き込みが絶えないらしい。

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以上は、10年前に書いたもので、また10年後の今と状況の比べっこをしてみたい。

最近では、硫化水素を使った自殺が急増している。ある種の洗剤などを混ぜて硫化水素を発生されて自殺する方法なのだが、ネットで作り方が簡単にわかるし、それで広まったため、後を絶たない。

秋葉原の殺傷事件のあとは、今日も携帯サイトの掲示板に、渋谷で殺人予告を書き込んだとして、16才の女の子が書類送検された。
今は殺人予告とか自殺予告とか携帯サイトに書き込みをする、携帯を利用した事件は相変わらずだ。

秋葉原の殺傷事件は昨日のスター紙でも1面で特集記事が出た。罪なき人が犠牲になったのは痛ましいし、両親の謝罪もキリキリと胸を締め付けられた。

押しつぶされそうな孤独を感じている人が多いのだろう。
話なんかできない相手でも、勇気をだして自分の気持ちを話してみる、また反対に聞く人は真剣に聞いてあげる姿勢があれば最悪の事態を少しでも防ぐことができるだろうにと思う。

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